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解説 | 個人情報・顧客データ

退会者の個人情報は、何年持つべきか

タイムズカーの情報流出から考える、持ちすぎない保管の仕方

公開日:2026年10月14日 / 更新日:2026年10月19日 / 合同会社オンエーケー

本稿は、2026年10月14日時点で公表・報道されている情報にもとづいています。原因は外部の専門機関が調査中と発表されており、今後の発表で事実関係が変わる可能性があります。

カーシェアサービス「タイムズカー」で、会員情報が流出しました。報道で大きく取り上げられたのは、退会した人の情報まで含まれていたこと、そして運転免許証の画像を退会後も7年間保管していたことです。同業の会社には、本人確認が済んだら画像をすぐに消している会社もあると報じられています。

流出事故が続くなかで、「企業に個人情報を渡したくない」という声も強まっています。けれども会員制のサービスは、顧客データなしには成り立ちません。必要なのは「持たない」ことではなく、持つ量を減らし、残すものを正しく持つことです。本稿では、なぜ持ちすぎてしまうのかを確かめたうえで、どうすれば減らせたのかを、顧客データの実務の視点から整理します。

01 FACTS何が起きたか

項目公表・報道されている内容
事案パーク24グループのカーシェアサービス「タイムズカー」のWebサイトへの不正アクセス。2026年9月25日に検知し、同日に第1報を公表
規模約660万件の会員情報。うち運転免許証などの本人確認書類の画像が含まれるのは約160万件
対象現在の会員、退会した会員(2019年9月以降に退会した人)、入会の手続きを終えていない人
流出した項目氏名、住所、生年月日、電話番号、メールアドレス、運転免許の情報と画像など。クレジットカード情報は含まれないと発表
原因外部の専門機関が調査中。約20年前に作られたシステムが動き続けていたとの報道もある
その後の動き国土交通省が、カーシェア事業者も加盟する全国レンタカー協会に対し、情報漏えい対策の点検を要請(10月30日までに取り組み状況の報告を求めていると報道)。免許証の再交付の申請が相次ぎ、警察庁はほぼ全国の窓口で再交付を認める運用としていると報じられている

出典:運営会社の公表資料、および各社の報道(末尾の一覧を参照)

02 THE QUESTION問われたのは「なぜ7年も持っていたのか」──保存期間は法律で決まっているのか

運営会社は、退会後も情報を保管している理由を、公表したQ&Aで項目ごとに説明しています。

項目保管の理由(運営会社の説明)
氏名、住所、生年月日「税法等に基づき7年間保管しています」
運転免許の情報と画像なりすまし対策と問い合わせ対応のため、7年間保管

報道の取材に対しては、氏名・住所・生年月日は法人税法で7年の保存が義務付けられていると説明する一方、免許証の画像については社内に取り決めがなく、独自の判断で保存していたと答えたと伝えられています。

同じ「7年」でも、法律にもとづく部分と、会社が自分で決めた部分が混ざっていたことになります。そして、会社が決めた部分である免許証の画像については、すぐに消している同業の会社がある。つまり、持たずに済ませる方法があったということです。

03 WHY IT HAPPENSなぜ持ちすぎてしまうのか

持ちすぎは、この会社だけの問題ではありません。多くの会社で、同じ理由から同じことが起きています。

7年は「最初に決まる数字」

個人情報の保持期間を決める場面には、事業の担当、経理、法務、情報システムが関わります。このとき全員がすぐに合意できる数字が、税務上の帳簿と取引書類の保存年数、7年です。「法律で決まっている」と言える年数は説明が要らず、項目ごとに年数を分ける検討も省けます。その結果、税務とは関係のない項目まで、同じ7年に乗ってしまいます。

消すことは、持ち続けるより難しい

消す前に決めなければならないこと

・退会したあとに再入会した人の履歴を、どうつなぐか
・料金の未払い、事故、違反の照会が残っている人を、どう除くか
・同じ人が複数の会員番号を持っているとき、どれを消してよいか
・消したことの証拠を、どう残すか

どれも、決めるには手間がかかります。一律に7年持つことは、こうした検討をすべて先送りできる、最も安い選択でした。

免許証の画像を「原本」として残したくなる

申込みで入力された内容と、免許証に書かれた内容は、そもそも一致しないことがあります。

氏名住所
申込みフォームの入力山田 華子春日町3-1-5
免許証の記載山田 花子春日町3丁目1番5号 春日マンション101

※ 架空の例。字の違い、建物名の省略は、どの会員データにも一定の割合で含まれる。

食い違いがあったとき、どちらが正しいかを確かめる手がかりは画像です。旧姓の使用や改姓などで登録名と免許証の名前が違う人では、両者を結びつける根拠も画像だけになります。だから会社は、画像を「念のため」残したくなります。

ただ、確かめるために必要なのは画像そのものではなく、確かめたという事実です。ここに、減らす糸口があります。

04 HOW TO REDUCE減らす方法はあった

画像の代わりに、「確かめた記録」を残す

本人確認の時点で、入力された内容と免許証を突き合わせ、食い違いを直したうえで、誰が、いつ、どの項目を確かめ、どう直したかを記録します。記録が残れば、画像は消しても、あとから「確認は済んでいた」と示せます。すぐに画像を消している会社は、この考え方に立っていると考えられます。

項目ごとに、持つ意味と流出したときの害を比べる

項目持ち続ける意味流出したときの害
氏名、連絡先、利用の履歴大きい。再入会、照会への対応に使う本人への連絡や詐欺に使われるおそれ
本人確認書類の番号中くらい。照会への対応に使う中くらい
本人確認書類の画像小さい。確認が済めば、日々の業務では使わない大きい。なりすましにそのまま使われるおそれがある

画像は、使う場面がもっとも少なく、流出したときの害がもっとも大きい項目です。持つ期間をいちばん短くすべきなのは、ここです。個人情報保護法も、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めています。

退会の時点で、動かす

節目で始められること

・退会の時点で、免許証の画像を消す。照合の記録だけを残す
・税務のために残す項目は、Webサイトから届かない場所へ移す
・入会の手続きを終えていない人のデータは、短い期間で区切って消す
・残す項目と年数を、法律で求められている部分と、会社の判断の部分に分けて規約に書く

法律が求めている部分と、会社が必要だと判断した部分を分けずに「法令上の義務」と説明すると、問題が起きたときに説明が崩れます。会社の判断で持つのであれば、その目的と期間を利用規約に書き、本人に示すのが正面からのやり方です。

05 COUNT FIRST減らす前に、数える

減らすと決めても、多くの会社は最初の一歩でつまずきます。自分たちが何を、何件、どこに持っているのかが分からないからです。10月9日に会員情報の流出を公表したブックオフは、最大約643万件という数字について「会員番号の件数で、実際の人数ではない」と説明しました。同じ人が複数の番号で登録されていると、件数と人数はずれます。何人分のデータを持っているのかを、すぐに答えられる会社は多くありません。

  1. 本当は何人分を持っているか会員番号の件数ではなく、同じ人をまとめたあとの人数を答えられるでしょうか。
    確かめ方:氏名の字体や住所の書き方の違いを含めて、同じ人を名寄せしてみる
  2. 項目ごとに、理由と年数を言えるか氏名、連絡先、本人確認書類、利用履歴。それぞれについて「何のために、何年、どこに置いているか」を答えられるでしょうか。
    確かめ方:保持期間を定めた社内の文書に、項目ごとの記載があるかを見る
  3. 退会・解約した人のデータは、どこにあるか現在の会員と同じデータベース、同じ経路で届く場所に置かれていないでしょうか。
    確かめ方:情報システムに「退会者のデータに、Webサイトから到達できるか」を尋ねる

2026年7月に公布された改正個人情報保護法で設けられた課徴金は、不正な取得や違法な第三者提供などが対象で、攻撃を受けて流出したこと自体は対象ではありません。それでも、流出のたびに問われるのは「なぜ持っていたのか」です。今回は国が業界全体に点検を求めており、同じ問いは同業の各社にも向けられています。

ポイント 消費者の警戒が強まるほど、偽名や使い捨てのメールアドレスでの登録が増え、企業に残るデータは不正確になっていきます。持つ量を減らし、残すものを正しく持つ。その第一歩は、いま持っているものを数えることです。

SOURCES出典

※ 本稿は、公表資料と報道にもとづく一般的な解説であり、特定の企業を批判する目的のものではありません。法的な助言でもありません。個別の案件については、貴社の法務部門または弁護士にご確認ください。

関連資料:ホワイトペーパー VOL.3『量より、何を持つか』(漏れたときに負う責任を左右する、顧客データの持ち方)/会員データ実数調査(持っているものを数える調査)

御社の会員、本当は何人ですか?

OnAKの「会員データ実数調査」は、名寄せで同じ人をまとめた実人数、届かない住所、何年も動きのない会員、保存期間を過ぎた項目を数え、持たずに済む項目と減らせる件数、手を打てるお客様を報告する調査です。氏名や電話番号を記号に置き換えたデータでも行えます。

合同会社オンエーケー(OnAK)は、データクレンジング・名寄せ・データ突合を専門とする会社です。削除の基準などは案としてご提供し、確定は貴社の法務部門のご判断に委ねます。